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御堂筋くんと山口くんの短文ばっかり。
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 朝の所為か、風邪の引きはじめか分からんけど。登校中、少し、咳が止まらんかった。

 自転車を置いて、昇降口まで歩きながらも、こんこんと咳をする。…ああ、マスクしてくるんやった。そんなボクの後ろから、御堂筋くん、と声がかかる。

「…なんや、山口くん」
「なんや、ってお前。おはよう。」
「…はよう。」

 小さい声で、そんでも返事を返すと。たったそんだけで、山口くんが。嬉しそうに、黒色の目ぇをぎゅうと、細める。
 そない、山口くんに。…一瞬、過ぎりそうになった感情を、想う前に打ち消した。…想うてへん。ボクは想うてへん。こないなザクゥのことを、可愛えなんて想うてへん!

「どないしたん」

 余程、ボクゥがおかしな顔をしとったんやろうか。怪訝そな顔で 山口くんがボクを見上げる。

「…別に。」
 投げるように言うて、誤魔化しがてら、顔を背けて咳をした。目線を戻せば、山口くんがどっか心配そうな顔で、ボクを見とった。

「なんや御堂筋くん、こんこんしとんの?」
「…は?」

 なんやそれ。思うたことは、そのまんま表情となって出とったらしい。ああ、って顔をして、咳、って言いなおした。

「ごめんなあ、つい癖で言うてもうた」

 昔っから、咳んこと、こんこんて言うてたから、直らんくて。照れたように笑うて、そんなことを言いながら。山口くんが。コートのポケットを探る。
 …なんや、咳がこんこんとか。なんやそれ。阿呆か。…阿呆か!キモ!そんなことを、必死で思うて。また過ぎりそになった3文字を、頭振って懸命に打ち消す。

「御堂筋くん」

 やらかい声が、ボクを呼んだ。なんや。いつもに輪をかけて不愛想に、返事を返せば。…そんでも山口くんがふわりと笑うて、手を差し出した。

「これ。やるわ」

 その手には、ミルク味の飴。舐めた方がええよ。のど飴とちゃうけど、少しはましちゃうかな。そう言うて、尚も。優しい顔で、笑う山口くんに。
 …ありがとう、と喉奥だけで呟いた。聴こえるかも分からんかった、それに。そんでも嬉しそうに、山口くんがまた、ふわりと笑んだ。


 そのまんま、封を開けて。口に、放り込んだミルクの飴は。

 …ボクの知っとるモンよりも、甘い、優しい味が、した。







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 大分、来慣れた感のある、あきらくんの部屋で。目の前のテレビが流しとるんは、あきらくんがすきやという、ロボットアニメのDVD。最近も映画になっとったみたいやけど、これは大分前にやってたほうやんな?

 まだ多分序盤なんやろうけど、おもしろい。背が高くて胴体細くて、手足が長くてちょお猫背気味のロボットは、なんやリアルで。…なんとなく、あきらくんに似てるなあ、なんて、そんなことを思うてもうた。背高くて細くて手ぇも足も長い感じ。

 目まぐるしく変わる場面に、見入りながら。そんでも、ぎちりと動かんからだに、気になって逆に身動ぎする。…やっぱり動かん。
 
「…あきらくん」
「なーんやぁ山口くぅん」

 真上?それとも、斜め横?微妙な角度から聞こえる声に、密かにため息を吐いた。あかん、これは確信犯や。…つかこの体勢で、確信犯も何もないけど。

「動かれへんのやけど」
「あーそー」

 やっぱりな。ほとんど他人事のように返ってくる言葉は、半ば予想通りで。これは諦めなあかんなあ。きっと。

 あきらくんの長い腕は、俺に回っていた。腕だけやない、足も。なんやこれ、雁字搦めか。
 後ろから、抱き締める…ていうか、抱き込むような体勢。あきらくんの腕んなかで、ひとつも身動きがとれへん。

「苦しいし」
「大変やねぇ」
「…なんで他人事」
「他人事やろ」

 …いや。いやいやいや!なんでそんな他人事なんや!張本人やろ!内心のツッコミは、そんでも俺の口から出ることはない。言うたって全スルーなんは知っとるし。

「どなんしたんな」
「なんもぉ?」

 横目で見ると、いつも通りに。あきらくんがかぱりと口を開いて、楽しげに笑っとった。…ほんま、なんなんやろう一体。この状況。

「別に、こんなんせんでも逃げへんし、ちゃんと観るよ?おもろいし」
「そんな理由ちゃうわ」

 腕の隙間から、画面を指せば。指さすな、って手をはたかれた。画面のなかでは、この話から登場してきたらしい、赤色のロボットが。海の怪物と、なんや戦っとる場面。…なんていうか、ほんま、リアル?やなあ。これで、大分昔のアニメなんやもんなあ。すごいなあ。

「あきらくん、あの…ええと、弐号機がすきなんやろ?この赤いやつ」

 言いながら顔を覗き込むと、少しだけ嬉しそうに、眼ぇを細めて頷かれた。よう覚えとるな、て言われて、そりゃあな、て俺も笑うて頷いて返す。
 あきらくんがすきや言うてたこの赤い機体が、弐号機で。主人公の子ぉが乗っとるんが初号機で、ここにはおらんけどもう一人、青い髪の子が乗ってたんが零号機、やったよな。ここまではちゃんと分かったし、覚えたんや。…多分。

「ていうか、これザクは出てきぃへんねんな?」
「出てくるわけないやろ。全然ちゃうやつや」

 ザクに乗っとるんは公国軍や。て、俺でも知っとるロボットアニメの名前を言われた。俺でも知っとる、白いロボットと赤いロボットが有名なあのアニメ。それもすきなん?て聞いたら、ほどほど。て返された。…すきなんやろな、きっと。絶対、そうは言わんけど。
 素直やないなあ。そないあきらくんに、こっそり笑うと。なに笑うてんねや、て、ちょおとだけ不機嫌そうに、俺を覗き込んでくる真っ黒い眼。かちかち鳴らしてくる歯ぁに、またちょおとだけ笑うてしまう。
 …あきらくんてさ、素直やないけど、素直やよな。そんな相反したことを、こころんなかだけでこっそり想えば。何かを察したらしいあきらくんが、尚も眼ぇを眇めて、俺を見た。…あかん、こんなん思てるなんて分かったら、絶対怒られる。

 曖昧に笑うて、誤魔化す俺に。不満そな顔をしながらも、あきらくんもそれ以上追及しては来んかった。…良かった。

 そのまんま、ほとんどホールドされた状態で、2人で黙って画面を見つめる。段々と、身動きできへん状況にも慣れて来てもうて。ていうか、抱き締められとるのが、なんや、心地良くなってきてもうて。 

 無意識に。俺に回る腕に、手ぇを置いて。後ろに居るあきらくんに、寄っ掛った。
 
 あきらくんが、驚いたように息吸うた音が、ひゅ、て聴こえて。その後で、楽しそうに喉震わして笑う、声。
 
 テレビんなかから、一層激しなる戦闘の音が部屋に響いて。それに見入る俺の、耳に。あきらくんが、歯を立てる勢いで、口を寄せて、キスをしてきた。

「っぎゃあ!なっなにするんやあきらくん!」
「キミィがボクを座椅子代わりにするからやろ」

 ていうかなんやその悲鳴。呆れたように言われてた俺が、あきらくんを。思わずグーで殴ってしまったんは、しゃあないことやと思って欲しい。


「…まだ、これ序盤やんなあ?」
「せや」
「ふーん」
「…なんやぁ、一体ぃ」
「や、なんていうか」


「それやったら、まだ一緒に観てられるなあ、て思て」


「…阿呆か」
「なんでや!一緒に観たいんやもん、ええやろ」
「……別に、ええけど」
「うん」

「…ていうか、そんなら」
「うん?」

「これ観終わっても、あっちのほうも観たらええやん。キミィの言う、ザク出てくるほう。…一緒に」

「ええの?」
「…ええよ」

「それは、楽しみが増えたなあ」
「……せやね」






御堂筋くんと山口くんがデートしてみた。


「今日どうしよか、御堂筋くん」
「なんか映画でも見よかあ」
「………」
「なんやぁその意外そうな顔」
「…や、なんや予想以上にまともな発案やったから」
「…寄生虫館でも行こか。東京まで。」
「映画がええな!俺!」

「ほんで御堂筋、なんの映画観るつもりや?」
「これ」
「…ホラーやな」
「せやな」
「ホラーすきなん?」
「べつに?」
「……なんで観るん?」
「山口くぅんは?」
「別に嫌いやないよ。すきでもないけど」
「………」
「なんやそのいやっそうな顔」
「ちっ」
「なんで舌打ち!?」

「ほならええわ」
「嫌がらせか!」
「山口くぅんは」
「うん?」
「どの映画が嫌いや?」
「……その選択しかないんか、俺」
「どれでもええよぉ?」
「……きらいって……」

「つかごめんやけど、俺嫌いな映画ないわ」
「………」
「ほんまそのいやっそうな顔止めてくれへん?」
「なんやつまらんわあ」
「…お前なあ…」

「ほなら御堂筋くんはどれがええの」
「ないわ」
「ないんか」
「おん」
「…そなら映画止めてどっか違うの、」
「しゃあない、山口くぅんのすきなんでええわ」
「…ええの?」
「あるんならな」

「…ほなら、これ」
「ほんっま無難やなあ山口くぅんはこれ今一番人気やないか流行もんに流されるタイプかほんっまつまらんわあ」
「悪かったな!」
「まあええわ。チケット売り場何処や」
「……」
「なにぃよ」
「え、ほんまええんか?」
「なんやぁ」
「…や、なんか意外やわ」
「…観んのやめよか」
「観たいです。」
「ほな行くで」

(鑑賞中)

「…よう泣くなあ」
「うるさいわ」
「…ほら」
「え」
「隣で泣かれんのうっといわ」
「…ありがとう」

(ぎゅ)

「!?」
「…こっち見んなや、映画観ぃ」
「え、せやって」
「…手!置くとこないんや、邪魔なんやしゃあないやろ」
「………」
「…ほんま見んな。キモ」
「はいはい」
「…なに笑うとん」
「べつに?」
「………ほんまキモいわ」



「意外とデートっぽいやんな!安心したわあ!」
「石やんこれはでがばめって言うんやで?」
「出歯亀や井原。」









「山口くぅんまで、ボクゥを見棄てるんやぁ」

 いつもの。俺を蔑んだような眼が。全く想ってもないようなことを、俺に、言う。
 俺が、御堂筋…くん、を見捨てるとも思ってへんし。もしそれが本当やって、全然構んような。寧ろそれを望んどるような口調。

 ていうか、お前がそれを言うかて感じやな。インハイで俺を、俺等をあっさりと見捨てて切ったのはお前のほうやのに。
 もう、呆れもはても尽き果てた。怒るより先に呆れてもうて、思わず苦笑する。と、少しだけ嫌そうに、御堂筋くんが眉を寄せる。…ああ、お望みの反応やなかったってことか。でもなあ、俺かってお前の望む反応なんて、分からんからね。

 せやから。

「…見捨てへんよ」

 返しながら、手を伸ばす。キモ、と振り払われると思った俺の指は、存外あっさりと、彼に受け入れられた。伸びかけの髪が、指にこそばゆい。
 ゆっくり撫ぜると、眼を細めてにやりと笑った。馬鹿にしとるんか、やっぱり蔑まれてんのか、それとも。…思いかけた言葉を、出てくる前に飲み込んだ。そんなん、ある訳もない。

「キモ」

 キモーイわぁー、山口くぅーん。いつもの口調で、御堂筋くんが歌うように言う。一層のこと楽しそうに。それでいて、やっぱりと振り払われへん俺の、指。
 見捨てられたらええのかなあ。不意に浮かんだ言葉は、打ち消す前に勝手に消えていく。…せやって、そんなんもある訳ない。

 確かに、今までの京伏は壊されたんやろう。彼に。そらもう完膚なきまでに、粉々に。
 そんでも、それは俺等の責任や。勝たれへんかった俺ら。御堂筋くんの独裁に、そんでもすがるしかなかった、俺等。

 …ええチームや、って石垣さんは笑っとった。ほんまは分からん。今の俺等が、どうなんかも。
 そんでも。…やっぱり。


「仲間やからね」


 ぽつり、とつぶやいた言葉は。今度こそ、御堂筋くんの、いつもの言葉に。一蹴されて、砕けて消えた。






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