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御堂筋くんと山口くんの短文ばっかり。
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 山口くんは、抱き心地がええ。


「…それって、言外にデブて言うてへん?」
「言うてへんわ」

 腕んなかで、口を尖らしてくる山口くんは無視して、ぎゅうと抱きしめた。病気の所為で、男から女になってもうた山口くん。…男やった時も、なんとなく柔こそなイメージがあったことを、なんとなく思い出す。もう、『思い出す』というくらいには、昔のことになってもうた、男やった頃の山口くん。
 
「なんや、別に柔こい訳や無かったやろうになあ」
「なにが?」

 頭だけで思うてたことは、知らずに口から漏れ出てもうた。ボクの言葉が聞こえたらしい山口くんが、今度は不思議そうに、腕んなかからボクを見上げてくる。…ほんまに山口くんは、怒りが持続せぇへんなァ。まあ、ほんまに怒っとった訳でもないんやろうけど。

「…別にィ?」

 …なんとなく。男やった頃のキミを考えてました、と言い辛くて。話をはぐらかすように、そんだけ言うて、彼女の首筋に顔を埋める。あったかい。

「なんやそれ」

 山口くんは、別に疑問にも、気を害した様子もないようや。苦笑するように笑うて、ボクの頭を撫ぜてくれる。…この感触が、ボクは好きやった。彼女が、髪を撫ぜてくれる指先。
 こんなん、別に山口くんには言わんけど。きっと、彼女にはもう、ばれとるやろう。

 …男でも、女性になっても、山口くんは変わらんかった。笑う顔も、困る仕草も、ボクに対する態度さえ。なにがどうあろうが、キミはキミやった。

 せやから、ボクは。


「キミが好きやと、想うてただけや」


 呟くように、そう告げると。驚いたような気配がして、それから。

「俺も、御堂筋くんのこと好きやで」

 優しい声が、降って来て。それを噛み締めるように、彼女の首筋で、眼を閉じた。





(ああ、これやからボクは、キミが好きや)


 

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