04 | 2024/05 | 06 |
S | M | T | W | T | F | S |
---|---|---|---|---|---|---|
1 | 2 | 3 | 4 | |||
5 | 6 | 7 | 8 | 9 | 10 | 11 |
12 | 13 | 14 | 15 | 16 | 17 | 18 |
19 | 20 | 21 | 22 | 23 | 24 | 25 |
26 | 27 | 28 | 29 | 30 | 31 |
[PR]上記の広告は3ヶ月以上新規記事投稿のないブログに表示されています。新しい記事を書く事で広告が消えます。
※5/4超全ケイで配りましたペーパーのみどやま♀ssです。
*********************************
山口くんは、抱き心地がええ。
「…それって、言外にデブて言うてへん?」
「言うてへんわ」
腕んなかで、口を尖らしてくる山口くんは無視して、ぎゅうと抱きしめた。病気の所為で、男から女になってもうた山口くん。…男やった時も、なんとなく柔こそなイメージがあったことを、なんとなく思い出す。もう、『思い出す』というくらいには、昔のことになってもうた、男やった頃の山口くん。
「なんや、別に柔こい訳や無かったやろうになあ」
「なにが?」
頭だけで思うてたことは、知らずに口から漏れ出てもうた。ボクの言葉が聞こえたらしい山口くんが、今度は不思議そうに、腕んなかからボクを見上げてくる。…ほんまに山口くんは、怒りが持続せぇへんなァ。まあ、ほんまに怒っとった訳でもないんやろうけど。
「…別にィ?」
…なんとなく。男やった頃のキミを考えてました、と言い辛くて。話をはぐらかすように、そんだけ言うて、彼女の首筋に顔を埋める。あったかい。
「なんやそれ」
山口くんは、別に疑問にも、気を害した様子もないようや。苦笑するように笑うて、ボクの頭を撫ぜてくれる。…この感触が、ボクは好きやった。彼女が、髪を撫ぜてくれる指先。
こんなん、別に山口くんには言わんけど。きっと、彼女にはもう、ばれとるやろう。
…男でも、女性になっても、山口くんは変わらんかった。笑う顔も、困る仕草も、ボクに対する態度さえ。なにがどうあろうが、キミはキミやった。
せやから、ボクは。
「キミが好きやと、想うてただけや」
呟くように、そう告げると。驚いたような気配がして、それから。
「俺も、御堂筋くんのこと好きやで」
優しい声が、降って来て。それを噛み締めるように、彼女の首筋で、眼を閉じた。
(ああ、これやからボクは、キミが好きや)