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御堂筋くんと山口くんの短文ばっかり。
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 大分、来慣れた感のある、あきらくんの部屋で。目の前のテレビが流しとるんは、あきらくんがすきやという、ロボットアニメのDVD。最近も映画になっとったみたいやけど、これは大分前にやってたほうやんな?

 まだ多分序盤なんやろうけど、おもしろい。背が高くて胴体細くて、手足が長くてちょお猫背気味のロボットは、なんやリアルで。…なんとなく、あきらくんに似てるなあ、なんて、そんなことを思うてもうた。背高くて細くて手ぇも足も長い感じ。

 目まぐるしく変わる場面に、見入りながら。そんでも、ぎちりと動かんからだに、気になって逆に身動ぎする。…やっぱり動かん。
 
「…あきらくん」
「なーんやぁ山口くぅん」

 真上?それとも、斜め横?微妙な角度から聞こえる声に、密かにため息を吐いた。あかん、これは確信犯や。…つかこの体勢で、確信犯も何もないけど。

「動かれへんのやけど」
「あーそー」

 やっぱりな。ほとんど他人事のように返ってくる言葉は、半ば予想通りで。これは諦めなあかんなあ。きっと。

 あきらくんの長い腕は、俺に回っていた。腕だけやない、足も。なんやこれ、雁字搦めか。
 後ろから、抱き締める…ていうか、抱き込むような体勢。あきらくんの腕んなかで、ひとつも身動きがとれへん。

「苦しいし」
「大変やねぇ」
「…なんで他人事」
「他人事やろ」

 …いや。いやいやいや!なんでそんな他人事なんや!張本人やろ!内心のツッコミは、そんでも俺の口から出ることはない。言うたって全スルーなんは知っとるし。

「どなんしたんな」
「なんもぉ?」

 横目で見ると、いつも通りに。あきらくんがかぱりと口を開いて、楽しげに笑っとった。…ほんま、なんなんやろう一体。この状況。

「別に、こんなんせんでも逃げへんし、ちゃんと観るよ?おもろいし」
「そんな理由ちゃうわ」

 腕の隙間から、画面を指せば。指さすな、って手をはたかれた。画面のなかでは、この話から登場してきたらしい、赤色のロボットが。海の怪物と、なんや戦っとる場面。…なんていうか、ほんま、リアル?やなあ。これで、大分昔のアニメなんやもんなあ。すごいなあ。

「あきらくん、あの…ええと、弐号機がすきなんやろ?この赤いやつ」

 言いながら顔を覗き込むと、少しだけ嬉しそうに、眼ぇを細めて頷かれた。よう覚えとるな、て言われて、そりゃあな、て俺も笑うて頷いて返す。
 あきらくんがすきや言うてたこの赤い機体が、弐号機で。主人公の子ぉが乗っとるんが初号機で、ここにはおらんけどもう一人、青い髪の子が乗ってたんが零号機、やったよな。ここまではちゃんと分かったし、覚えたんや。…多分。

「ていうか、これザクは出てきぃへんねんな?」
「出てくるわけないやろ。全然ちゃうやつや」

 ザクに乗っとるんは公国軍や。て、俺でも知っとるロボットアニメの名前を言われた。俺でも知っとる、白いロボットと赤いロボットが有名なあのアニメ。それもすきなん?て聞いたら、ほどほど。て返された。…すきなんやろな、きっと。絶対、そうは言わんけど。
 素直やないなあ。そないあきらくんに、こっそり笑うと。なに笑うてんねや、て、ちょおとだけ不機嫌そうに、俺を覗き込んでくる真っ黒い眼。かちかち鳴らしてくる歯ぁに、またちょおとだけ笑うてしまう。
 …あきらくんてさ、素直やないけど、素直やよな。そんな相反したことを、こころんなかだけでこっそり想えば。何かを察したらしいあきらくんが、尚も眼ぇを眇めて、俺を見た。…あかん、こんなん思てるなんて分かったら、絶対怒られる。

 曖昧に笑うて、誤魔化す俺に。不満そな顔をしながらも、あきらくんもそれ以上追及しては来んかった。…良かった。

 そのまんま、ほとんどホールドされた状態で、2人で黙って画面を見つめる。段々と、身動きできへん状況にも慣れて来てもうて。ていうか、抱き締められとるのが、なんや、心地良くなってきてもうて。 

 無意識に。俺に回る腕に、手ぇを置いて。後ろに居るあきらくんに、寄っ掛った。
 
 あきらくんが、驚いたように息吸うた音が、ひゅ、て聴こえて。その後で、楽しそうに喉震わして笑う、声。
 
 テレビんなかから、一層激しなる戦闘の音が部屋に響いて。それに見入る俺の、耳に。あきらくんが、歯を立てる勢いで、口を寄せて、キスをしてきた。

「っぎゃあ!なっなにするんやあきらくん!」
「キミィがボクを座椅子代わりにするからやろ」

 ていうかなんやその悲鳴。呆れたように言われてた俺が、あきらくんを。思わずグーで殴ってしまったんは、しゃあないことやと思って欲しい。


「…まだ、これ序盤やんなあ?」
「せや」
「ふーん」
「…なんやぁ、一体ぃ」
「や、なんていうか」


「それやったら、まだ一緒に観てられるなあ、て思て」


「…阿呆か」
「なんでや!一緒に観たいんやもん、ええやろ」
「……別に、ええけど」
「うん」

「…ていうか、そんなら」
「うん?」

「これ観終わっても、あっちのほうも観たらええやん。キミィの言う、ザク出てくるほう。…一緒に」

「ええの?」
「…ええよ」

「それは、楽しみが増えたなあ」
「……せやね」





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