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どうやら。ヤマと御堂筋くんは、付き合うてるらしい(まじか)。
「だぁ~れぇ~だ~ァ」
ゆらゆらと。揺れるような声が、部室に響いた。ちょっとしたホラーや。高いんか低いんか分からんような、それでいて異様に楽し気な声。
…ちらりと、横目で声のした方を見る。顔全部を向けてガン見、なんて死んでも出来ひん。そろり、と伺うように視線を這わせれば。同じように、横目で見やっとる井原さんと眼が合うた。途端に漏れる、井原さんの諦めたよなため息に、思わず笑うてしまう。
ばれんように、這わせた目線の先には。…声と同じく楽しそうに、真っ黒い眼ぇを細めて。大きな口の端を上げて、並びの揃った歯ぁをかちかち言わせながら。部室に並べられとる備え付けのベンチに腰かけた、ヤマの目を。後ろっからその手で覆っとる、我らがエースの姿。…なんなんやろう、この光景。
多分、俺がやられたら。座ってたって直立不動で立ち上がってまうやろう。せやって怖いし!意味も意図も分からんし!
そんでも、実際にそれをやられとる、目の前の俺の親友は。俺より大人しくって、控えめで。どっちか言うたら、怖がりなビビリやった筈なのに。少なくとも、御堂筋くんには。…今まで、俺よりも怯えて、苦手としとった筈、なんに。
御堂筋くんのその行動に、怖がることも怯えることもなく。寧ろ楽しそうに、ふわりと笑う。目ぇも、眉すらも、その手に隠れて見えんのに。あの太目の眉をちょお下げて笑う、困ったようにはにかんで笑うその様が、手に取るように分かった。
「御堂筋くんやろ」
「ぶー」
やらかい声が、彼の名前を呼んだ。途端に、御堂筋くんが口を尖らして指を離す。その顔は、やっぱり楽しそうな笑顔や。
「ざぁんねん、あきらくんでしたー」
「えー、なんやそれぇ」
あかん、意味が分からん!頭を抱えそうになって、なんとか押し止まる。聞いてたっていうのがばれたら、なんやあかん気ぃがひしひしとするし。…いや、聞くも何も、丸聞こえなんやけどな!?
部内の何とも言えん空気なんて、なんのその。まるで気づいてへんように、ヤマを覗き込んで笑う御堂筋くんに、ヤマも笑うて返す。後ろから抱きつくような体勢になった御堂筋くんの、その頭をヤマが撫ぜた。その周辺だけ花でも散ってそうにピンクい雰囲気。
「そんなら、あきらくんて言えばよかったんか、俺」
「せやぁ」
「そうかぁ、そんなら今度からそうしようかなあ」
「ていうか遅いわァ。そんなんボクから言わんでも、そうせなあかんやろォ」
…御堂筋くんの口調が、なんやいつもと同じようで違う気ぃがすんのは、気の所為やろうか。伸ばし気味の口調が、なんや、なんか、こう。…甘えとる気ぃが、すんのは。…気の所為やな!気の所為やんな!?
聞きたなくても聞こえてくる、2人の会話。…あかん、どんどんヒットポイント下がってくる。
「そうやな、ごめんなぁあきらくん」
「…別にええよォ?ただ、これからはそう呼ばなあかんからな」
御堂筋くんの体勢が、抱きつくような、から確実に抱きついとる、に変わった。ぎゅう、と音までしそうに長い腕が、ヤマを抱きしめて。まるで猫のように、その頭がヤマの肩から首筋に、摺り寄せられた。そない御堂筋くんを、目ぇを細めて。ヤマが、優しい手つきでゆっくりと撫ぜる。まるで愛惜しいものを見るような目線は、なんやこっちまで照れてまうようで。…あかん、なんやSAN値までごりごり削られてきた。
あー、あぁもう全力で突っ込みたい。ほんま、お前らが『なんやそれ』や!つかなんやその遣り取り!何処のばかっぷるや、なんでそんなんなってもうてるんですか御堂筋くん!そんなキャラやないでしょう!お前もやヤマ!一体いつからそない風になってもうたんや!
こころんなかで叫ぶように思った言葉は、どうやら井原さんもおんなじらしい。軽いため息に、そっちを見遣れば。…虚ろな眼ぇして俺を見る、井原さんとまたも眼が合うた。
曖昧な顔で、笑うてみせれば。虚ろな眼ぇのまんま、井原さんがちらりとあの2人を見遣る。
「…あいつら爆発せんかなあ」
しみじみと噛み締めるようなその言葉に。思わず、全力で頷きかけて。
「…あの2人居らんかったら、インハイ負けますよ」
「…せやなあ…」
現実を見て、呟いた言葉に。井原さんが、諦めたように肩を落とした。