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「山口くぅんは、ボクのこと、すきィ?」
瞳孔でも開いてとるように、見開いて真っ黒い眼ぇが、目の前よりも近くに迫った。
俺の首に、彼の指が意思を持って巻かれる。ぎゅ、と軽く力が籠もって、ああこれは本気やなあ、と頭の片隅で思う。
『愛してるって言わなきゃ殺す』って、言葉が不意に掠った。なんやったっけ。歌の歌詞?題名?それとも、何かの本やったか。どっちにしても、随分前やと思うけど。俺も、このフレーズしか知らんし。なんや、ここだけ有名やんな。
今の状況って、まさにそれちゃうか。思わず笑うてしまいながら、間近にある、彼の頭を軽く撫ぜる。御堂筋くんは、微動だにせんと。薄っすら笑いながら、俺を見ていた。
…別に、こんなんせんたって、ちゃんと好きなんやけどなぁ。伝えとるつもりでもあるんやけど、どうやったら、ちゃんと伝えられんのかな。
「好きやで、大好きやわ」
言いながら。頭を撫ぜる手は止めんまんまで、空いとる方の手ぇで緩く抱きしめる。俺を見詰める真っ黒い眼に、感情は見えん。こっちを探るように、見開かれた眼。
…そない彼が、どうしようもなく愛惜しかった。髪を撫ぜる手を止めて、両腕でぎゅう、と抱きしめる。…動揺したように、首に回る御堂筋くんの指が、少しだけ緩んだ。
「…山口くん、ボク本気やで?なんで逃げへんの」
感情見えへんかった真っ黒い眼が、心持ち揺れとるようや。まるで、俺に拒否でもしてほしかったみたいに、か細い声が、ぽつりと零す。…え、なんでって。
「御堂筋くんのことが好きやから」
想うたことを、正直に告げた。抱きしめてた細い身体を少し離して、顔を見つめる。驚いたようにその真っ黒い眼が見開かれて、それから戸惑ったように逸らされる。
それが、少しだけ可笑しくて。…それから何故だか切なくなって、そんでもやっぱり愛惜しいくて。目ぇを細めて、彼に笑う。一瞬、くしゃりと彼の顔が歪んで。…それから、俺の肩に、彼の顔が伏せられた。首に回された指は、いつの間にか外れとった。
「…そんなん言うてたら、いつか、ほんまに殺されるかもしれんよ」
「俺さ、お前にやったら殺されてもええんやけど」
そう言うたら、俺の肩に顔を埋めたまんまで。そんなこと言いなや、って、泣いとるような彼の声が聴こえた。
「…せやけど、お前が捕まるようなことになったらいややし。これからもお前の傍に居りたいから、俺やっぱり生きてたいなあ」
「…当たり前や」