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※【山口くんは横たわったままで、大切な友の夢を見ています。このまま眠り続け、姿・形は変わりません。想い人に触れられることで呪いが解け、目を覚まします。#ゆめのなか https://shindanmaker.com/534506】
という診断を見て、やりたくなったみどやま
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夢を見てた。
夢んなかで、これは夢やと知っていた。見慣れた京伏自競部の部室。そこに石垣さんがおって、ノブがおった。辻さんも井原さんも、安さんもおって、小鞠もおる。木利屋も船津もおって、俺に向かって手を差し出してきてた。『ヤマ、なにやっとんのや。ほら、早く』。石垣さんがそう言うて、笑いながら手招きをする。一様に笑うみんな。それに、俺もつられて笑いながら、足を踏み出す。…そこで、気づいた。
みんな居るなか、彼だけがおらん。…御堂筋くん。
あぁ、夢にもでてきてくれへんのかぁ。少しだけ哀しくなって、踏み出した足を、止めた。『どないしたん、ヤマ。早よおいで』。その声を、聞き流しながらそのまま、ぼんやりと立ち竦む。
気づくと、石垣さんたちの姿は消えていた。いつの間に、部室から出ていったのか。それとも、夢からフェードアウトしたんか。何も分からんまんま、たった一人残された部室は、輪郭さえ危うい。
ぼやぼやと溶けていく部室の残骸んなかで。ああそうやな、って、夢んなかの俺は、そう納得しとった。なにが『そう』なんかもわからん。でも、そうやと思った。
御堂筋くんに逢いたいなあ。そんなことを思いながら、も一度、一歩を踏み出した。もう床ですらない、その感触も無い場所を踏みしめて。
ドアの、あったところに手を、伸ばす。みんなは、こっから出て行ってもうたんやろうか。さっき、早くて言われた時に、ちゃんと追いかければよかった。…なんで、あそこで聞き流してもうたんやろ、俺。
取り止めもなく、そないことを思いながら。ドアやったところに触れて、ゆっくりと押してみた。開いとるのか、それとも俺が突き抜けてんのか。どっちにしても、その先に行ける感覚。
先に、進もうとして。不意に。…頬に、あったかいもんが触れた、気がした。驚いて、一瞬目を瞑ってしまう。目の奥に、明るいひかりが小さく、弾ける。
それが収まった頃に、ゆっくりと、瞼を開けた。眩しい。いっぺんに入り込んできた眩いひかりに、目が慣れんくて。慌てて目ぇを、瞑ってもうた。細かく瞬きをして、もう一度目を、開く。
…御堂筋くんの顔が、目の前にあった。
息すら届きそうな近くに、見開いて四白眼になった、彼の顔。驚いてもええ筈やったのに、…何故か、俺は安心した。自然に顔が緩んで、笑うてしまう。
あぁ、ここにおったんやな、御堂筋くん。俺、めっちゃ逢いたかったんよ。声に出したいのに、息しか漏れん。そんでも嬉しくって、彼に笑うた。頭の芯が、まだ眠っとるようにぼやぼやとぼやけたまんまや。
そない、俺に。…見開いてた御堂筋くんの顔が、微かに、やけど確かに小さく、歪んだ。ぼたり、と。上から降ってくる水滴。
俺の頬に触れてたんは、御堂筋くんの指やと、漸く気づいた。小さく震えとる、彼の指。…なんで、泣いとるの?そう口にしたはずの声は、喉奥で掠れる。そんでも、彼には伝わったように。
「…うるさいわ。キミが、キミィが、目ぇ覚まさんからやろォ…!」
いつも通りの口調は、そんでも、指と同じように語尾の辺りで小さく、震えた。ぼろりとまた、その眼から水滴をこぼしながら。御堂筋くんが、そのまま俺に被さってくる。俺の顔の横に置かれた両腕。御堂筋くんの顔が、触れるくらいに近くに来とって。
…まるで、抱き締めるみたいやと。未だぼんやりとする頭の隅で、場違いに想うて。早いリズムの、心臓の音が、心地良かった。
(…俺が。三日三晩眠ったまんまやったことを聞いたんは、それからもう少しし手からやった)